彼女とは30年来の付き合い
私が彼女に出会ったのは、生まれてすぐの30年前。もともと親同士が仲良かった為、お腹にいる時からの親友といえる存在でした。同じ時期に生まれ、同じ地域で育ち、同じような教育を受けていたけれど大きく違ったのが彼女のアトピーでした。ポリポリと体を掻く程度だったのが、皮膚が剥けるまで、血が出るまで掻くようになった小学時代。
不思議なもので小さい時からそばにいる私はその光景を見ても目を背くこともなければ、彼女に直接なぜ掻くのか?痒いのか?聞いたこともありませんでした。気づけば掻いていたのでそれが日常かなと思っていたのだと思います。
ですが子供は時にとても残酷で、心無い言葉を平気で言ったりするものです。彼女にもやはり好奇な目、人と明らかに違う皮膚が変色した肌には容赦なくなぜ?や気持ちが悪いなどのとてもかわいそうな言葉が浴びせられました。
見たことないものに出会った時、人は勝手に良いか、悪いか判断してしまいがちですが子供は人と違うことは全て悪いと思いがちです。無理もなく子供は自分が見た世界、周りの大人から見た世界がこの世の全てだから人と違う特徴を持っている人に対して寛容にはなれないのです。大人になった今ようやく分かるものなのです。
今は結婚して幸せに
小さい時から好奇な目、また自分の皮膚への劣等感から段々と暗い性格になった彼女は、特定の人以外とは話さず、目を見ることすら出来なくなりました。夏は本当に地獄だとよく言っていました。暑くて汗を掻くと余計に掻きたがる、シャワーに入る、肌が乾燥してしまい、さらに掻く。
これを聞いたら何が正解か分からなくなっていた自分がいました。そもそもなぜ彼女だけアトピーなのか、ご両親も兄弟もアトピーではなく、なぜ彼女だけこういう時に正直言って神様は不公平だなと思ったのですが、彼女はもっともっと前から世の不公平さを肌で感じていたんだと思うと自分が更に浅はかだったなと思ってしまいます。
あの辛く、長い青春時代から随分と時が経ちましたが、彼女の人生は誰が見ても右肩上がりになりました。高校時代には治療のために入退院を繰り返し、社会人になる頃にはほとんど分からないくらいの美しい肌に生まれ変わり、性格は前向きになり、社会生活をエンジョイしていた頃に今のご主人と出会い結婚。
彼女はよく、男性とお付き合いするなんて考えたこともなかったけれど、まさか結婚だなんて未だに信じられない、家族を持つだなんて、 目標になれないくらい別次元だと思っていたから。と言います。彼女の持っている明るい性格と控えめでいて芯の強い心は大きなものを乗り越えてきて今とても輝いているのだと思います。
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